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物語「耳を切った女」。 [本]

みなさま、「隠花植物的人生と山口祐一郎様」コメント欄で告知したものの、すっかり忘れていらっしゃるであろう物語ができました。

この物語を基本的にファンNO.?さんに捧げます。でも、現実の彼女とはまったく関係ありません。暗黒耽溺とまでいかなくても酷な内容も出てきますので、念のため。まさかとも思いますが、マネしないで下さいね!

あくまでもブログの上でのお遊び、と思ってお読みくださいませ。

 「耳を切った女」

※この物語はフィクションです。

 信濃町の駅前の路地で、呼びとめられた。

「おじょうさん、恋をしとるじゃろ」

 声にふりむくと、猿のようにシワだらけの老婆が手招きする。

「そのお方とデートできるなら、借金してでもいいと思っていなさるね?」

 老婆は、歯のない口を開けて笑う。

 薄気味悪い。


 けれど…その話を友人としたばかり。つりこまれ、老婆の座っている一隅に歩いていった。

アイフルだののサラ金から引き出せるだけの金をすべて使ってでもいい、と思ってなさるなら、それほどの心積もりがあるなら、できない話ではないの」

「本当ですか!!」

「本当じゃて。ただ、金じゃだめじゃが」

「なら、なんですか?」

「お前の片耳じゃ。これで切り取って、わしにくれんかね?

 そしたら、望みはかなうて」

 と、ギラリと光る幅広のナイフをかざす。

 わたしは受け取り、左耳をためらいもなく切り落とす。

 鮮血がどくどくと流れ、老婆から受け取ったガーゼハンカチで押さえる。老婆は言う。

「じき血はとまるて。このハンカチは、たくさんの乙女の血と涙を吸ったによって。

 おお、それにしても、勇気のあるおなごじゃ」

 老婆はにっこり微笑むが、目はまるで笑っていなかった。

 痛みに顔がひきつる。わたしは訊いた。

「これから、どうすればいいですか?」

「まず、髪を短くして耳を切ったのを見せないといかん。

 それから、ほれ、出まちをすりゃあいい。それで、お相手はようやく、あんたを見つけられる」

                               ☆ ☆ ☆

 血が止まり、切断したあとには赤黒い血がこびりついている。痛みは不思議とない。髪を切ったあと、道行く人はギクリとした顔つきでわたしを見る。

 有楽町の劇場の地下に行く。出まちの女たちの列がすでに出来上がっている。わたしの傷をみて、あわてて目をそらす。

 警備員の数が倍に増えた。ああ、彼の登場だ。人気も随一の彼は、出まちのファンも群を抜いて多いので、警戒して警備員は増える。

 彼はハイタッチをして、通り過ぎようとする。

 彼はまんべなく笑いかけ、でも、足をとめない。不公平がないように、同じ速度、同じ笑い。

 わたしの前も同じように通り過ぎようとする。

 彼は笑いを崩さない。

 胸が締めつけられる。あのオババはウソつきだったの? だまされた?


 後悔すまい。自分の判断力のなさを憎もう。わたしはあまりに大きな憧れを抱きすぎた。

 なぜ、ここまでわたしは彼に憧れたの?

                                        ・・・続く。


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JOY

またしてもドキドキしつつ、続きを待ちます^^
by JOY (2006-12-04 16:39) 

アルティメット建築家

ご無沙汰してましたので、纏めて読みました。
うーむ彼にそこまで・・・・女性にそこまで思われるのが良いのか悪いのか・・・・
ものには限度があると思いますが。
by アルティメット建築家 (2006-12-04 18:55) 

chi-ran

うわ~~っ  怖いけど入りたくなるお化け屋敷状態ですw
早く 続きを~~くださいっ!
by chi-ran (2006-12-04 19:03) 

yokonozo

耳切って出待ち。
こわい。
こわすぎます。
by yokonozo (2006-12-04 19:59) 

katsura

みなさま、こんばんは。よんどころない事情とは、まさしく「耳切り」だったのですね。

JOYさんへ、どうぞお待ちになってくださいませ、ゆっくりと。まあ、明日で完結ですが。

なりたて建築家さんへ、引きますよね、フツー。ただ、限度のないのがこのワタクシkatsuraワールドでございます。恋の奈落へ螺旋状に旋回しながら落ちていただきましょう、もう、離しませんっ。

ちえさんへ、
>怖いけど入りたくなるお化け屋敷状態ですw
けだし名言です。次回、使わせていただきます。

yokonozoさんへ、今なら引き返せます。出口はこちら。
by katsura (2006-12-04 20:14) 

katsura

トラネコさん、ナイス!ありがとうございます!
by katsura (2006-12-04 20:14) 

ふぁんNo.?

はい。わたしです。(あぁ、まさにローアンのように登場★)
(すみません、舞台をご存じない方々。こういう出演者がいるのです)
ついにこの時がきてしまったのね・・

あぁ~~~どぅコメントしたらよいのでしょう~~
ありえなくない、事の展開!
話の展開もさることながら、きっとわたし、こう考えた、っていうことが
すべて文字になってるこの驚き・・・つづきが・・こ・わ・い・・
by ふぁんNo.? (2006-12-04 21:26) 

かよりん

「信濃町」で以前勤務してました。
「有楽町」昨日友達と銀座で遊んでたのですが、どうしても会いたくてたまらず友達に詫びいれて20時30分に劇場地下に走っていってる私がいました・・・。
「恋をしとるじゃろ」今日会社でお客様にお電話でいきなり言われました。(嘘みたいだけど実話です。)
そんでもってついでに私はショートカット。
このお話はふぁんNo,?さんへ捧げる物語。私は第三者として温かく見守ろうと思っていましたが、なんか偶然の一致に物語の内容もさることながら、感じるところが多々ありました。
ふぁんNo,?さんもおっしゃってますが、私達ファンにとってはこの展開まんざらありえないとは言えないんですよね~。こわいことに。
イゾルデと違って描写が現実世界にかなり忠実なだけに、リアルにこわい。
明日どうなるのでしょう?ドキドキです。
by かよりん (2006-12-04 22:12) 

katsura

みなさま、真打二名の登場です。真打は一名と決っているようですが、この際まとめて面倒見ましょう。
この物語、どうやら、お二人にとっては、
「手元狂わぬ 短剣の如くに わが魂の生来の苦悩を 突きとおす」ようだったのですね。

ふぁんNo.? さんへ、ボーマルシェ言うところの(アドリブ)「老けた赤頭巾ちゃん」のローアンさんさながら、でしたか。
明日はもっと怖いです。書いている本人もクラクラしました。

かよりんさんへ、明日会社に来てくださいね。信濃町のオフィス、もうなくなったんだから、出張のフリしないように。
お客様に「恋をしとるじゃろ」と言われるなんて、うらやましい。わたしも言われてみたい。
by katsura (2006-12-04 22:50) 

haru

おおお゛ーっ なんと、いいタイミングの「続く」でありましょうか。
まるで、目から火を放ち、竜を踊らせながら、投げた魔球の姿が見えぬところで続くとなるあの野球アニメのようです。
わくわく・・どきどき
by haru (2006-12-04 23:09) 

かよりん

明日会社にはちゃんと行く予定です。今のところは・・・。
信濃町は、四谷のお隣。あ~四谷!(遠い目)
さっき書き忘れましたが、「なぜ、ここまでわたしは彼に憧れたの?」このフレーズ自分に置き換えてしまい、ぐっとこみあげるものがありました。
明日は何時頃続きをアップされますか?いつもとだいたい同じ時間なら早起きは苦手だけど、頑張って起きようかな。
by かよりん (2006-12-04 23:54) 

Baldhead1010

耳なし芳一・・・。
by Baldhead1010 (2006-12-05 06:26) 

katsura

haruさんへ、それって「巨人の星」ですかあ?偶然にも第二話には、野球が登場します。ま、巨人ではないんですが。

かよりんさんへ、どうか落ち着いてください。ご心情、わからぬわけでもありませんが、基本的にふぁんNo.? に差し上げた物語、ということをお忘れなく。

「愛すること」は、「殺されること」と同じ、と知ったのはいつのころからなんでしょうか(私見です)。

Baldhead1010さんへ、相変わらずいい味出していますねー。お経書き忘れたっ♪
by katsura (2006-12-05 06:44) 

ふぁんNo.?

続きがアップされてますが、読む前の冷静なうちに・・
katsuraさん。書いていただいて光栄です。ありがとうございます。
耳なし芳一・・そう、あの光景ですよね。子どもの頃衝撃のお話でした。
ゆうべ、おだやかにお話してくださる祐様が夢に出てきてくれました♪
もう、それだけで満足ですね~。・・・後編読むの、どぅしよっかなぁ~。
by ふぁんNo.? (2006-12-05 10:34) 

かよりん

横レス失礼します。
ふぁんNo,?さんへ。 祐様夢に出てきて下さったんだー。よかったですね♪
おだやかにどんなお話されていたのですか?
それと、「どぅしよっかなぁ~。」は祐様の口真似で読まなきゃいけないんですよね(笑)
by かよりん (2006-12-05 22:09) 

megumi

いきなり@横溝正史さまの小説に出てくるような、

老婆が登場;;;;ストーリーを読むうちに、妖怪人間ベムの老婆にかわってしまって

ストーリーもそうなりました>>>

続きが楽しみです。。。
by megumi (2006-12-05 22:48) 

ふぁんNo.?

ときおり耳をなでてしまっているんです、わたし・・これ、癖になってしまいそぅ。
かよりんさん、夢ではそこだけ柔らかな光にあふれていたのですが、
その後の無常な現実の一日と、ときおり意識の表にうかんでくる
鮮血のイメージと、歯のない口と・・で、なにを話していたのだか、とんと覚えていません・・衝撃を受けた後って、その瞬間を覚えてないらしいです。
そして「」は龍之介で読んでくださいまし。
by ふぁんNo.? (2006-12-05 23:32) 

katsura

ふぁんNo.? さんへ、夢まで見せてしまいましたか。おおお。
耳のモチーフってわりと使うんだ、ってことに今気がつきました(「無人島」ではありませんが)。耳フェチとしてのわたし。

かよりんさんへ、横レス大歓迎の水玉です。どうぞどうぞ。

megumiさんへ、妖怪ですか。まあ、似たようなもんですねが、どうも一部ではワタクシじゃないか、と噂がたっています。うー。
by katsura (2006-12-06 00:13) 

megumi

妖怪では、なく妖怪人間ベムにでてくる、、、
老婆がそんな雰囲気なのです。
あのアニメはすごい。。。
by megumi (2006-12-06 02:06) 

katsura

megumiさんへ、失礼。いずれにしろ、天女のように美しい、というわけにはいきませんなあ。
by katsura (2006-12-06 06:31) 

nao

とっても面白かったです。
怪しい老婆、芥川龍之介の「妖婆」を連想しました。
by nao (2006-12-06 10:22) 

katsura

naoさんへ、面白かった、と言ってもらえてうれしいですね。かよりんに「耳切ろーか」と囁く職場です。
by katsura (2006-12-06 21:31) 

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